CFPが考える介護のリアル

CFPが「介護のリアル」についてデータ等を用いて解説します

「高額介護サービス費」は介護にかかった全ての費用が対象ではありません!

これまで3回に渡って「公的介護保険」制度について解説してきました。その中で、支給限度額を超えて「介護サービス」を利用した場合、超えた分の「介護サービス」は全額自己負担であることをお伝えしました。

しかしある方から「高額介護サービス費」で、ある一定額を超えた介護サービス費用は払い戻されますよね?と言われたことがあります。それは勘違いです。

そこで今回は、「高額介護サービス費」について解説します。

※今回も「公的介護保険」を「介護保険」と記載します。

 

<高額介護サービス費とは>

「介護サービス」を利用すると、かかった費用の1割~3割を自己負担することになっていますが、その自己負担額にも所得に応じて限度額があります。そしてその限度額を超えた分は、「高額介護サービス費」として払い戻しを受けられるのです。

自己負担額が1割~3割になっている時点で、所得によって差が付けられていますが、所得が少ない方はさらに負担が軽減されるという制度です。2段階になっていて、ちょっとややこしいですね。

 

<高額介護サービス費の上限額は?>

上限額は、世帯の所得によって次の様に決まっています。

世帯での合算が出来る為、1人ではこの上限額を超えなくても、夫婦2人共「介護サービス」を利用している場合は、上限額を超える事があるかもしれませんね。

 

<高額介護サービス費払い戻しを受けられる例>

世帯の年収770万円未満、負担の上限額が44,400円の場合で、夫婦共に要介護認定されているとします。

「介護サービス」の利用による自己負担額が、夫は30,000円、妻は20,000円だとすると、どちらか片方の場合は44,400円を超えないので「高額介護サービス費」の払い戻しを受けられない様に思えますが、自己負担額を夫婦で合算すると50,000円となり、44,400円を超える為、5,600円の払い戻しを受ける事ができます。

1カ月に世帯で支払う「介護」に関する費用の上限が決まっていれば、少し安心できますね。

ただし、全ての費用がこの対象となる訳ではありません。

 

<高額介護サービス費の対象とならないもの>

  • 福祉用具購入費(ポータブルトイレなど)
  • 住宅改修費の1割~3割負担分
  • 施設サービスの食費、居住費や日常生活費など(こちらは元々「介護保険」対象外の費用です)
  • 支給限度額を超え、全額自己負担となる利用者負担分

最後の、支給限度額を超え、全額自己負担となる利用者負担分というのが間違えやすいポイントです。前回のブログで解説した通り、支給限度額というのは「要支援・要介護」状態で異なります。

こちらは、前回のブログで解説した「要介護2」に認定された方が25万円の「介護サービス」を利用した場合の例です。

「要介護2」の場合、支給限度額は197,050円です。要介護2に認定されている方が25万円の「介護サービス」を利用した場合、197,050円を超えた部分の52,950円は全額自己負担することになっています。上の図の一番右のピンクの部分です。この「全額自己負担」の部分は「高額介護サービス費」の対象とはなりません

それはそうですよね。この超えた分が「高額介護サービス費」の払い戻しの対象になったら、なんの為の支給限度額か分からないですよね。

「高額介護サービス費」の払い戻しの対象となるのは、一番左の緑色の部分39,410円のところです。この金額を上限額と照らし合わせ、上限額を超えていたら払い戻されます。

ここまでは「介護保険」についてでしたが、病院にかかった際には「医療費」を支払います。「介護費用」と「医療費」両方を支払うことで、かかる費用が多くなってしまう方の為に、「介護費用」と「医療費」を合算して、限度額を超えたら払い戻してもらえるという制度もあります。

 

<高額医療・高額介護合算療養費制度とは>

「高額医療・高額介護合算療養費制度」とは、毎年8月から翌年7月までの1年間の「医療保険」と「介護保険」の自己負担額を合算した額が、所得に応じて決められた限度額を超えた場合、払い戻される制度です。

要介護認定されている方は、病院にかかることも多いと思います。ここにも上限額が定められていたら、安心できますね。上限額は次の通りです。

こちらは1年間での限度額で、同じ医療保険制度に加入している家族は合算できます。

医療保険」にも「高額療養費制度」というのがあるので、上限を超えた金額は払い戻されます。そして「介護保険」にも「高額介護サービス費」という制度があるので、上限を超えた金額は払い戻されます。

ですので、両方から払い戻されてもまだなお負担が大きい方に、さらに上限を定めたということでしょうか。

ありがたい制度であることに間違いはありませんが、覚えておくのは大変ですね。ちなみに、「高額介護サービス費」と「高額医療・介護合算療養費制度」は、該当する場合通知が届くそうですので、これらの制度を覚えていなくても、通知を見落とさなければ大丈夫です。

 

<まとめ>

今回は、上限を超えた場合に払い戻される制度をいくつか見てきました。日本の社会保障制度は、かなり手厚いということがご理解いただけたかと思います。しかしここで気になることがあります。

超高齢社会の日本において、これから「大介護時代」が来ると言われています。今年から団塊の世代の方々が75歳を超え始めるのです。人口の大半を高齢者が占める日本において、この手厚い社会保障の財源はどこにあるのでしょうか?

ここまで数回に渡って「介護保険」の制度について解説してきました。次回からは、もう少し【介護】の問題について踏み込んでいきたいと思います。それでは次回も、是非ご覧ください。