CFPが考える介護のリアル

CFPが「介護のリアル」についてデータ等を用いて解説します

高齢者人口の割合から「公的介護保険」制度について考えました

これまで数回に渡り「公的介護保険」制度の中身について解説してきました。「公的介護保険」制度によって、もし要介護状態になっても安心だなぁと思われた方も多いのではないでしょうか。

しかし、実際はどうなのでしょう。現在の「公的介護保険」制度だけで要介護状態への備えは充分なのでしょうか。そもそも現在の「公的介護保険」制度はこのまま維持されていくのでしょうか。

そこで今回から、こういったことについて様々なデータを基に考えていきたいと思います。

 

9月19日は敬老の日でした。そこで総務省統計局が『統計からみた我が国の高齢者ー「敬老の日」にちなんでー』というデータを発表しています。そこからいくつかデータを見てみたいと思います。

<高齢者の人口>

日本の総人口は、前年に比べ82万人減少しています。一方で、65歳以上の高齢者人口は3,627万人と、前年に比べ6万人増加したんだそうです。そして、総人口に占める高齢者の割合はなんと29.1%となったそうです。

日本は「超高齢社会」と言われますが、この言葉には次の様な定義があります。

  • 高齢化社会・・・65歳以上の高齢者の割合が人口の7%を超えた社会
  • 高齢社会・・・65歳以上の高齢者の割合が人口の14%を超えた社会
  • 超高齢社会・・・65歳以上の高齢者の割合が人口の21%を超えた社会

日本では、1970年に「高齢化社会」に突入しました。そして1995年に「高齢社会」になります。そして2010年に「超高齢社会」になり、現在に至ります。

高齢化社会」「高齢社会」「超高齢社会」は7の倍数になっています。21%の次は28%なので、本来であれば「超高齢社会」に次ぐ新しい言葉が生まれていてもおかしくなく、今の日本は新しいステージに突入しているということですね。

そして最新のデータでは、2040年には35.3%になると見込まれています。「超高齢社会」の次の次のステージに入るということです。

1950年からの高齢者人口及び割合の推移をグラフにしたものがこちらです。

総務省統計局のグラフをお借りしました)

人口のデータは、将来推計といえども確実性が高いと言われています。なぜなら、既に生まれている人のデータがほとんどだからです。加えて、ただでさえ低かった出生率が、コロナ禍において更に低くなりました。そのことから考えると、2040年の高齢化率35.3%というのは、もしかしたら、もっと高くなるのかもしれません。

2040年、まだまだ先と思われるかもしれませんが、あと18年後です。その頃の日本は、どういう社会になっているのか、心配でなりません。

 

<高齢者人口の割合を世界と比較すると?>

この様に、日本の高齢者人口の割合はかなり高いですが、世界と比較してみるとどうなのでしょうか。なんと、日本がトップです!

高齢者人口の割合上位10か国はこの様な感じになっています。

総務省統計局の表をお借りしました)

2位のイタリアと比べても、割合は断トツで高いですね!ただし、21%を超えると「超高齢社会」なので、どの国も問題を抱えているのではないでしょうか。ただし、日本の高齢化率はトップなので、社会保障政策において他国を真似するということが難しく、日本独自で考えなくてはいけません。それなのに、決定的な対策が打てていない様に感じられます。

 

<75歳以上の人口は?>

ここまで高齢者人口として65歳以上の人口を見てきました。しかし最近は、65歳と聞くとまだまだ元気なイメージがないですか?「要介護状態」になるような年齢には感じられませんよね。そこで「後期高齢者」と呼ばれる、75歳以上の人口について見てみたいと思います。

こちらは2000年から2060年(推計)までの75歳以上人口の推移です。

出典:厚生労働省老健局「介護保険制度をめぐる最近の動向について」(令和4年3月24日)

 

2000年と比べると、現在は約2倍、そして2060年には約2.5倍になると予想されています。なぜ2000年と比べたかというと、2000年は「公的介護保険」制度がスタートした年だからです。すなわち「公的介護保険」制度は、2000年の人口を基準に考えられている制度だということです。

 

<「公的介護保険」制度に及ぼす影響は?>

「公的介護保険」制度は3年に1度、制度改定が行われています。その結果、制度が始まった2000年と比べて、「介護保険料」はかなり高くなっています。また、「介護サービス」を受けた際に支払う自己負担額も、制度開始時は1割負担の方しかいませんでしたが、現在は2割、3割の負担をしている方がいらっしゃいます。

今回見ていただいた人口データによると、この先「介護保険料」はさらに上がり続けることは間違いなさそうです。

「自己負担額」も4割、5割負担という負担割合が創設されてもおかしくないのではないでしょうか。

そもそもこの「介護保険制度」、この先50年後も100年後も存続していける制度なのでしょうか。人口統計というのは、前述の通りかなり正確に将来の数値を出すことが出来ます。この先どういうことが起こるのかは、既に分かっているはずです。何か臭い物に蓋をしている感が否めません。

 

今回は高齢者人口のデータから「公的介護保険」制度について考えました。次回は、もう少し踏み込んで、「要介護認定者数」と「財源」について解説したいと思います。次回も是非、ご覧ください。