CFPが考える介護のリアル

CFPが「介護のリアル」についてデータ等を用いて解説します

「公的介護保険」制度の財源って、誰がどうやって賄っているんでしょうか?

前回のブログでは、日本では高齢者人口の割合がどんどん高くなっていることを解説しました。そこで今回は、高齢者人口の割合が高くなることで起こる問題、「要介護認定者数」の増加と、介護保険の「財源」について解説します。

 

<要介護認定者数の推移>

高齢者人口が増える事で、当然ですが「要介護(要支援)」に認定される人も増えています。こちらは「要介護認定者数」の推移のグラフです。

出典:厚生労働省老健局「介護保険制度をめぐる最近の動向について」(令和4年3月24日)

 

「公的介護保険」制度は2000年にスタートしました。こちらのグラフには載っていませんが、2000年の要介護認定者は218万人でした。しかし2020年にはなんと669万人になっています。約3倍です!

高齢者人口が増えているので当然と言えば当然です。

ちなみに、「要支援・要介護度」の内訳はこの様になっています。

出典:厚生労働省介護保険事業状況報告(暫定)」(令和3年1月分)

 

「要介護1」「要介護2」に認定されている人は100万人を超えていますね。中程度の「要介護状態」の人が多いことが分かります。

 

<「介護サービス」をめいっぱい利用すると?>

ここで、要介護(要支援)認定者の人が、「介護サービス」を支給限度額上限いっぱい利用したとして、「介護サービス」にかかる費用が年間どれぐらいなのかを計算してみました。

◆要支援1

50,320円×960,104人×12カ月=5,797億4,919万9,360円

◆要支援2

105,310円×951,377人×12カ月=1兆2,022億7,414万2,440円

◆要介護1

167,650円×1,394,635人×12カ月=2兆8,057億2,669万3,000円

◆要介護2

197,050円×1,163,724人×12カ月=2兆7,517億4,177万400円

◆要介護3

270,480円×897,600人×12カ月=2兆9,133億9,417万6,000円

◆要介護4

309,380円×838,439人×12カ月=3兆1,127億5,509万3,840円

◆要介護5

362,170円×585,891人×12カ月=2兆5,463億572万1,640円

これを合計すると、15兆9,119億4,679万6,680円となります。そして「介護サービス」を利用した人全員が1割負担と仮定すると、社会保障で9割を負担することになります。すると、14兆3,207億5,211万7,012円が必要なのです。

14兆と言われても、もはやどういう金額なのか見当がつきませんよね。そこでこちらが、令和4年度の国の一般会計歳入額のグラフです。

国税庁のグラフをお借りしました)

 

これを見ると、「法人税」が13兆3,360億円となっていて、介護にかかる費用だけで「法人税」を全て使ってしまうことが分かります。

今回は、「要支援・要介護」認定者が全員上限いっぱいの「介護サービス」を利用し、さらに全員が1割負担と仮定して計算している為、実際はこんなにはかかっていません。しかしこの先もっと高齢者人口が増えていくことが考えられるので、「介護サービス」にかかる費用は増えていくと考えられます。

そこで、実際はどれぐらいかかっているのかを見てみます。

 

介護保険にかかる金額は?>

「公的介護保険」にかかる給付費・事業費の推移はこの様になっています。

出典:厚生労働省老健局「介護保険制度をめぐる最近の動向について」(令和4年3月24日)

 

「公的介護保険」制度が始まった2000年と比べると、令和元年には10.6兆円と3倍以上になっています。さらに、2040年には24兆円になると予想されているのです。2000年と比べると約8倍です!すごい増加率ですよね。

それでは実際この財源はどこから賄われているかを見てみましょう。

 

<公的介護保険の財源は?>

公的介護保険の財源構成と規模はこの様になっています。

出典:厚生労働省老健局「介護保険制度をめぐる最近の動向について」(令和4年3月24日)

 

この様に、財源は「社会保険料収入」と「公費」で賄われていますが、社会保障費は右肩上がりです。つまり、被保険者から徴収した社会保険料収入では賄うことが出来ず、実態としては半分近くを公費で賄っているのです。

また、保険料の部分も被保険者の負担が大きくなっています。

 

<公的介護保険の保険料>

65歳以上の「第1号被保険者」が支払う「介護保険料(全国平均)」の推移がこちらです。

出典:厚生労働省老健局「介護保険制度をめぐる最近の動向について」(令和4年3月24日)

 

「公的介護保険」制度は、3年毎に改定されます。そしてこの改定の度に「介護保険料」は増加しています。「公的介護保険制度」がスタートした2000年と比べると、現在の保険料は倍以上になっています。高齢者人口がこの先も増えていくことを考えると、これからもますます「介護保険料」は増えていくのではないでしょうか。

ちなみに、こちらは65歳以上の「第1号被保険者」が支払う「介護保険料」のグラフですが、40歳~64歳の「第2号被保険者」が支払う「介護保険料」も、同じように増加しています。現役世代の負担も、これからますます重たくなると考えられます。

 

<まとめ>

以上のことから分かる様に、右肩上がりで増加し続ける社会保障給付費は、税金と借金に頼らざるを得ません。今回解説しているのは【介護】にかかる費用についてのみです。その他も【医療費】高齢者人口が増えることで増えていくでしょう。

やはり国民の負担は、ますます重くなっていくことを覚悟しなくてはいけませんし、「公的介護保険」制度のこのままの状態での存続は、なかなか厳しいものになるのではないでしょうか。