CFPが考える介護のリアル

CFPが「介護のリアル」についてデータ等を用いて解説します

「介護難民」続出するかもしれません

前々回、前回のブログでは、「高齢者人口の増加」や、それに伴い「社会保障費」が増えていることを解説しました。今回は少し話題を変えて、金銭以外のところで起こる問題について見ていきたいと思います。

 

<介護難民とは>

「介護難民」という言葉を聞いたことはありますか?

「介護難民」とは、介護が必要な「要介護者」に認定されているにも関わらず、「介護施設」に入所できなかったり、適切な「介護サービス」を受けられない65歳以上の高齢者のことを言います。

有識者会議の「日本創成会議」では、2015年に「2025年には全国で約43万人が「介護難民」になる」との予測を発表しています。

 

<介護難民が生まれる背景は>

なぜ「介護難民」が生まれるのでしょうか。それには大きく分けて次の2つの理由があると言われています。

  • 高齢化の進展による「要介護者数」の増加
  • 「介護従事者」の不足

 

【介護難民が生まれる原因①】

1つ目の「高齢化の進展による要介護者数の増加」については、前々回のブログで解説しました。

日本の総人口は減少しているにも関わらず、65歳以上の高齢者人口は年々増加しているのです。その結果、総人口の中で高齢者が占める割合は増加を続け、2025年には人口の約3割、2060年にはなんと、約4割を65歳以上が占めると言われています。

65歳以上の人が人口の約4割を占める社会って、想像できますか?

現在ですと、65歳ぐらいまで働いて、それ以降はこれまでの貯蓄と年金で暮らして行こうと思われている方が結構いるのではないかと思いますが、2060年には、若い人たちにしわ寄せが来るだけでなく、65歳以上の方も、健康であろうがなかろうが、働き続けなくてはいけない社会になっているのではないかと思います。

2060年、遠い未来の様な気がしますが、私もまだかろうじて生きているのではないかと思うので、2060年が来るのが怖くも感じます。

 

【介護難民が生まれる原因②】

そして「介護難民」が生まれる理由のもう1つが、「介護従事者の不足」です。

「介護事業者」に人手が足りているのかアンケートを取った結果がこちらです。

出典:公益財団法人介護労働安定センター「介護労働実態調査」(令和2年度)

 

左側のグラフが【全体】、右側のグラフが【訪問介護員】についてです。

【全体】の方のグラフを見てみると60.8%の介護事業所が人手が足りていないと回答しています。さらに【訪問介護員】にいたっては、80.1%の介護事業所が人手が足りていないと回答しているのです。

厚生労働省の資料によると、2025年度に必要な介護職員は約243万人です。それに対して、2019年度の介護職員数は約211万人なので、このまま介護職員が増えないとすると、2025年度には約32万人の介護職員が不足する計算になります。

さらに2040年度には、280万人の介護職員が必要と予測され、約69万人を追加で確保しなくてはいけないのです。

つまり、現在ただでさえ深刻な人手不足であるにも関わらず、今後ますます人手不足が深刻化することが予想されています。国は介護職員を増やす為に、これまでも様々な介護人材確保の対策に着手してきた様ですが、今後さらに総合的に強化する必要があると発表しています。

発表するだけではなくて、本気でしっかりと対策を打たないと「介護難民」が増加して、将来の日本はひどい社会になってしまいそうですね。

 

<「介護難民」対策は>

「介護難民」対策として国が打ち出したのが、「地域包括ケアシステム」です。

これは、地域密着型で高齢者をケアするという考え方で、地方自治体の「地域包括支援センター」が中心となって事業を運営しています。必要な「介護施設」や「医者」を紹介してくれたり、介護の相談にも乗ってもらえ、誰もが介護対策で利用できます。

この「地域包括ケアシステム」がどれぐらい「介護難民」対策に役立っているかは、またじっくりと調べてから、別のブログで解説したいと思っています。

 

<まとめ>

2060年には65歳以上の高齢者人口が、総人口の4割を占めると言われています。もちろんその中には、お元気な方もたくさんいらっしゃるので、全員が「要介護」状態になる訳ではありません。しかし、結構怖い未来が待っていると思いませんか?

もしその時、自分が「要介護」状態に認定されていて、「介護サービス」を受けたいと思っても「介護サービス」を提供してくれる人が見つからない。誰も自分の面倒を見てくれないとなったら、どうやって生活を維持させていけばいいのでしょうか。

子どもがいたとして、子どもが自分の面倒を見る為に仕事を辞める、そんなことになったらその子のその後の人生はどうなってしまうのでしょうか。

「介護離職」については、また別のブログで掘り下げたいと思っていますが、この「介護難民」問題、考えれば考えるほど怖い問題です。

ここまで数回にわたり、「高齢者人口」の増加に伴う様々な問題について解説してきました。次回からはもう少し具体的な【介護】の現実について解説していきたいと思っています。次回も是非、ご覧ください。