CFPが考える介護のリアル

CFPが「介護のリアル」についてデータ等を用いて解説します

「介護離職」しないために使いたい制度

ここまで「介護離職」について解説をしてきましたが、「介護離職」はできるだけ避けたいですよね。そして国もできるだけ「介護離職」は避けてもらいたいと考えています。そこで今回は、「介護離職」を避ける為に活用したい制度について解説します。

 

<支援制度>

①介護休業

原則として「要介護状態」の家族を介護する会社員などは、育児・介護休業法に基づき「介護休業」を取得することが出来ます。

「要介護状態」とは、負傷、疾病などにより2週間状にわたり常時介護を必要とする状態のことをいいます。

「対象となる家族」とは、配偶者(内縁含)、父母、子、配偶者父母、祖父母、兄弟姉妹、孫があてはまります。

「休業できる期間」は、対象家族1人につき、要介護状態に至るごとに3回を上限として、通算93日までです。

「手続き」は、休業開始予定日と休業終了予定日を決めて、原則として2週間前までに、書面等により会社側に申し出る必要があります。

同じ事業主に1年以上雇用されていることなどが条件として設けられています。介護休業を取得することが決まったら、なるべく早く会社に届け出ておくとスムーズに取得することが出来ます。

 

②介護休業給付金

介護休業を取得した雇用保険の被保険者(65歳未満の一般被保険者、65歳以上の高年齢被保険者)は原則、「介護休業給付金」を受給できます。

給付額は原則として、休業開始前の給与水準の67%です。

ただし、休業中に給与(介護休業の期間を対象とする分)が支払われた場合、介護休業給付金は減額・または不支給となる場合もあります。

※介護休業給付金には、上限額および下限額が決められています。

なお、同一の対象家族について、介護休業給付金を受けたことがある場合でも、異なる要介護状態で再び介護休業を取得した時には、介護休業給付金を受給できます。

ただし、同一の対象家族について受給できる日数は通算93日までです。

介護休業給付金は、介護離職を防ぐために経済的に支援する雇用保険給付です。正社員だけでなく、契約社員などでも条件を満たせば利用することが出来ます。

 

③介護休暇

要介護状態にある対象家族が1人の場合は年5日、2人以上の場合は年10日を限度として、時間単位から取得できます。

通院等の付き添い、介護サービスの提供を受けるために必要な手続きの代行等にも利用できます。

 

④勤務時間の短縮等の措置

要介護状態にある対象家族1人につき、介護休業とは別に、勤務時間の短縮の措置を2回以上利用が可能とするなど、会社側は以下のうち少なくとも1つの措置を講じなければならないとされています。

・短時間勤務

フレックスタイム制

・始業、就業時刻の繰上げ、繰下げ

・介護サービス費用の助成

 

⑤法定時間外労働の制限

介護者が申し出た場合には原則、会社側は所定労働時間を超えて労働させることが出来ません。また、申し出がある場合は1カ月24時間、1年150時間を超える時間外労働をさせてはいけないことになっています。

 

⑥深夜業の制限

④⑤⑥の制度は、勤務時間に制限を設けて仕事の負担を減らす制度です。

今回ご紹介した制度というのは、「自分が介護を行う期間」ではありません。今後、「仕事と介護を両立する為に体制を整える為の期間」です。

しかし、これらの制度は大企業で働いている会社員はしっかりと活用できるかもしれませんが、中小企業で働いている方、契約社員派遣社員の方は、会社の理解が得られないとなかなか活用するのが難しいかもしれません。

これから来ると言われる「大介護時代」においては、誰もが他人事ではありません。みんなで協力し合ってみんなが仕事を続けられるように、現役世代に向けて様々な周知が必要なのではないでしょうか。

<介護に関して知っている事>

介護離職を避ける為に、様々な制度が用意されていますが、この中で知っている制度はありましたか?「介護休業」と「介護休暇」が違うことはご存じでしたか?

「介護休業」は自分が介護を担う為の休業ではなく、仕事を続ける為に介護体制を整える為の期間だということはご存じでしたか?

親族が突然要介護状態になってしまった場合、介護施設を見つけるにも時間がかかります。最近は介護施設が一覧になっているサイト【LIFULL介護】 もたくさんあります。

こういったものを活用しながら、介護者と要介護者双方に負担がかからないような体制を、このような制度を活用しながら整えたいものです。

「介護」とは関係の無い生活を送っている多くの方は、この様な制度があることを知らないと思います。そこで、「介護に関して知っていること」を正社員として働いている人に聞いた結果がこちらです。

出典:厚生労働省「仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業」(令和元年度)

 

この調査結果から分かる様に、多くの人は「介護」に関しての制度を知りません。そうですよね。大々的に広報されていませんし、自分が「介護」の当事者にならない限り調べることもないと思います。

しかし、いざ「介護」の当事者になってしまったら、日々の生活に追われてゆっくり調べる時間をとることが難しいかもしれません。

 

<まとめ>

ここまで何回かに渡り「介護離職」について見てきました。

普段、多くの要介護者やその家族と接する機会の多いケアマネージャーによると、「介護離職しても何も変わらない」そうです。

「介護離職して良かった」と感じる人は少ないのです。

さらに、離職するのは簡単ですが、再就職するのは困難です。

現状に耐えられずに離職してしまう前に、周りの人と相談し、自分の不安や悩みを少しでも解消することが大切です。

仕事は出来る限り続けた方が良く、介護離職を回避することで、家族全員が幸せな道を歩める場合もあります。悩んだら一人で抱え込まず、とにかく誰かに相談してみてください。

介護施設に頼ることも1つの手です。【LIFULL介護】