介護離職のメリット・デメリットって?再就職はできる?
前回は「介護離職」の現状について解説しました。介護と仕事の両立が厳しくなることで、介護離職を選択してしまう方が多くいらっしゃいます。
しかし、介護離職を選択しても、日々の様々な負担は軽くなるどころか、逆に重たくなってしまうという現実があるのです。
ただし悪いことばかりではありません。そこで今回は、「介護離職」のメリットとデメリットを見ていきたいと思います。
<介護離職のメリット>
心身の負担が軽減できる
介護に専念できるので、要介護者をほったらかしにしているという罪悪感から逃れられることがあります。しかし、前回のブログで解説した通り、介護離職をすることで「精神的」な負担が増えてしまった方も多くいらっしゃいます。
介護費用を軽減できる
家族が中心となって介護を担う場合、公的介護保険制度を活用した「介護サービス」を利用することもありますが、「介護サービス」の利用頻度を減らすことができます。公的介護保険制度を活用した「介護サービス」であっても、利用には最低でも1割は自己負担しなくてはいけません。そこで「介護サービス」の利用を減らすことで、介護にかかる費用を軽減することが出来ます。
仕事の負担が無くなり、介護に集中できる
仕事のことを考えなくてもよくなる為、ストレスが減ります。介護の為に仕事を休んだり、定時で退社したりする場合、周りの目が気になることもあったかもしれません。そういったストレスを無くすことができます。
要介護者の希望を叶えやすくなる
介護者が介護に専念することで、お互いにコミュニケーションが鳥安kなり、要介護者は見放されていないと感じることができます。その結果介護者・要介護者双方の精神的な負担が減ります。
<介護離職のデメリット>
収入が減少する
介護離職することで収入源を失ってしまい、貯蓄を取り崩していくことになります。
要介護者の年金や貯蓄を使っての生活を考えていても、介護期間が長引いたり、介護施設に入居することになったりすると、資金が足りなくなってしまうことも考えられます。
自分が介護を担うことで「介護」にかかる費用は削減できますが、収入源が無くなるというのは、金銭的にはかなりデメリットとなります。
退職金・年金が減少する
介護離職することで、毎月のお給料が受取れなくなるのはもちろんですが、長く働くことで増えていくはずの退職金も辞めた時点での金額で受取ることになります。
また、会社員として働いていた場合は「厚生年金」に加入していることから、老後に受取れる年金額が、自営業者等の「国民年金」のみの受給者よりも多くなります。しかし介護離職してしまうと、厚生年金加入者ではなくなる為、将来受け取れる年金額も定年まで働いた時よりも少なくなってしまいます。
自身の老後資金の備えが不十分になる
介護離職することで、定年まで働いた場合よりも、毎月の収入、ボーナス、退職金、年金、全てが少なくなってしまいます。すなわち、介護離職することで、一生涯で受取れる収入全体が減ってしまうのです。
その為、自分の老後資金を貯めることが難しくなり、将来自分の生活が困窮してしまうかもしれません。
好きな仕事、やりがいのある仕事を続けられなくなる
働いているのはお金の為だけではない人もいます。好きな仕事だったり、やりがいのある仕事を続けられなくなることで、余計にストレスを感じることもあります。
築いてきたキャリアを失う
介護が終わり、仕事に復帰しようと思っても、以前と同様のキャリアを築けるとは限りません。管理職だった人は、管理職という立場で就職することが難しいかもしれません。やりたい仕事ができず、これまでの努力が実らなくなり、介護後の仕事に不満を覚えてしまうケースがあります。
再就職が難しくなる
介護期間はキャリアが空白となってしまい、就職自体が難しいかもしれません。希望の職業に再就職できる可能性は、介護離職しなかった場合と比べると、かなり低くなってしまいます。
介護に掛かりきりとなり、自分の自由な時間が確保できない
介護離職することで、「介護」に専念しなくてはいけないと自分を追い込んでしまうこともあります。また、周りの家族からも、仕事をしていないんだからと、無言のプレッシャーを感じてしまうかもしれません。
そうすることで、介護に掛かりきりとなってしまい、自分の自由な時間が確保できず、精神的に追い詰められてしまうことがあります。
精神的にストレスが溜まっていく
介護に対しての精神的なストレスだけでなく、将来への不安が精神的なダメージにつながることもあります。
介護はゴールが見えません。長期間に及ぶことも多く、先の見えない生活に不安を覚える人は少なくありません。
メンタルが不安定になると、要介護者・介護者が共倒れしてしまことにもなります。仕事を辞めて社会的なつながりが薄くなると、この傾向が強くなるので注意が必要です。
<介護離職してから再就職していない理由は?>
介護離職のデメリットとして、再就職が難しいということを上述しました。そこで、介護を機に仕事を辞めてから現在まで、再就職していない理由を見てみましょう。
出典:厚生労働省「仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業」(令和元年度)
こちらの調査結果を見ると、働く意欲があっても希望する就職先が見つからない方が多くいらっしゃることが分かります。やはり一度「介護離職」してしまうと、希望する仕事での再就職はなかなか難しそうです。
<介護離職後の再就職の状況は?>
次に、介護離職後に再就職した方たちの働き方を見てみましょう。
出典:厚生労働省「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査」(平成24年度)
介護離職後の再就職についての調査によると、介護離職後に再就職できた人の割合は、介護離職者全体の3割ほどという結果が出ています。
再就職が難しい理由としては、「年齢的な問題」「職歴の空白期間」「介護と就職活動の両立の難しさ」が挙げられます。
また、離職前と同じく正社員としての再就職はさらに難しく、収入は離職前より下がるケースが多いようです。
<まとめ>
「介護離職」にはメリットもあります。しかし今回見てきたように、デメリットの方が多くあります。
いろいろな事情から介護離職を選択せざるを得ない人もたくさんいらっしゃいます。しかし、介護が終わった後には、まだ自分の人生があります。介護を担う為とはいえ、その後の自分の人生が立ち行かなくなるという事態は避けたいものです。
全部自分がやらなくては!と思わずに、周りの人に助けを求めましょう。最近は、介護施設もインターネット【LIFULL介護】 で簡単に探すことができます。
その為には、介護に関する様々な制度を活用するのも1つの方法です。そこで次回は、公的な「支援制度」について見ていきたいと思います。是非次回もご覧ください。