「介護離職」とは?介護離職の現状を確認します。
ここまで「公的介護保険制度」の仕組みや、「在宅介護」「施設介護」の現状を様々なデータとともに見てきました。
日本は高齢者人口がどんどん増えていっています。それに伴い【介護】の現状はなかなか厳しいことを実感いただけたのではないでしょうか。
そこでここからは、厳しい【介護】の現状に伴い、現在起こっている様々な問題をみていきたいと思います。
今回は最近よく耳にする様になった「介護離職」についてです。
<介護離職とは>
介護離職とは、「家族の介護」と「仕事」の両立が困難となり、仕事を辞めることです。
介護には休みがないため、昼間はフルタイムで働き、帰宅後は介護を行う状況が長く続くと、介護者は心身ともに疲弊してしまいます。
「仕事」と「介護」の両立が難しいと、つい「介護に専念すればラクになるのでは?」と考えがちです。しかし、本当にそうなのでしょうか。
徐々に辛い立場に追い込まれてしまうこともある様なのです。
<介護離職した人はどれぐらい?>
それでは、年間でどれぐらいの人が「介護離職」をしているのでしょうか。
2020年に介護・看護の為に離職した人数は
70,500人
です。男女の内訳はこちらです。
出典:厚生労働省「雇用動向調査」(2020年)
やはり、女性が多いですね。
また、「介護離職」した人の年齢・男女別はこの様になっています。
出典:厚生労働省「雇用動向調査」(2020年)
一般的に、介護と仕事の両立が求められることが多い世代には、勤続年数の長い従業員や管理職など、企業の中核を担う人材が当てはまります。
その方たちが介護離職してしまうと、企業にとっても大打撃になってしまいます。
<介護離職の理由>
それでは、介護離職の理由を見てみたいと思います。
出典:厚生労働省「仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業」(令和元年度)
こちらのグラフは、介護を機に仕事を辞めた理由の上位5つです。
1位は、「仕事と介護の両立が難しい職場だったため」ということで、約60%を占めています。
これは、様々な要因が考えられますが、もしかしたら介護の為に仕事を休んだり、定時で退社したりすることが難しかったのかもしれません。
そうなると「介護離職」という選択をするしかなくなってしまいます。
また他にも、介護を担う人が自分しかいなくて、しょうがなく介護離職してしまったり、仕事と介護を両方担うことで体調を崩してしまい介護離職に至ってしまったり、要介護者が介護施設へ入所できずに介護の負担が増えた為に介護離職をしてしまったりと、「介護離職」をした理由は様々ですが、多くの場合ポジティブな離職ではありません。
<介護離職したら本当に楽になる?>
仕事と介護の両立が厳しくなり介護離職をしてしまうわけですが、それでは介護離職したら本当に生活は楽になるのでしょうか?
介護離職をした後の自身の変化を見てみましょう。
出典:厚生労働省「仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業」(令和元年度)
こちらのグラフを見てみると、介護離職を選択することで介護者の「心身」あるいは「経済的」な負担が軽減できると考えていたのに、実際は、「精神面」が56%、「肉体面」が51%、「経済面」が69%、介護離職後の「負担が増した」と答えている人がいるのです。
要するに、いろいろ追い詰められて介護離職を選択しても、何も楽にならない事が多いということです。
仕事を辞めて収入が減ったことで経済的に厳しくなり、その結果介護サービスの利用を少なくしなくてはいけなくて、心身共に負担が増えてしまうこともあります。
また、仕事をしている間は介護から離れ、気分転換になっていたのに、介護に専念することでストレスのはけ口が無くなってしまい、精神的に追い詰められてしまうこともあります。
この様に、介護離職をすることでよりいろいろと苦しくなってしまう方が多いのです。
<まとめ>
介護の負担が重たくなると、仕事との両立が困難になり、介護離職という選択をされてしまう方がいらっしゃいます。しかし「介護離職」は、自分にとっても会社にとっても大きなダメージになります。
その為、国も「介護離職」を避けるための様々な制度を用意しています。自分の体調や、周りの人の目も気になるかもしれませんが、できるだけ「介護離職」は選択しない方が良いと思います。
また、全部自分で抱え込まず、様々な制度や外部の業者に委託するなどして、少しでも自分や家族の負担が減る様にしたいですね。
例えば家事代行サービスを利用して、家の掃除をしてもらったり、料理を作ってもらうのも1つの手だと思います。
他にも、宅食サービスを利用してお弁当を定期的に届けてもらうのも良いと思います。
「介護」は自分が担いたい!と考えている方でも、家の掃除や自分のごはんなどは、外部業者にまかせるといいのではないでしょうか。
次回は、介護離職のメリット・デメリットを見ていきたいと思います。是非次回もご覧ください。