「在宅介護」の限界って?
前回のブログでは「在宅介護」の種類を解説しました。今回は「在宅介護」の現状を確認したいと思います。
<在宅介護を受けている人数(トータル)>
多くの人が「終の棲家」に「自宅」を希望することから、その希望を叶えようと「在宅」で介護をするご家庭が多くあります。それでは実際どれぐらいの人が「在宅介護」を受けているかを見てみましょう。
こちらは、居宅(介護予防)サービス受給者数の推移です。各年4月のデータですが、2022年は400万人を超える方が「在宅介護」を受けています。400万人って言われても、イメージがつきにくいかと思いますが、東京ドームの収容人数が55,000人だそうですので、東京ドーム73個分に収容できる方が「在宅」で介護を受けているイメージです。
要支援・要介護認定されている人は約680万人ですので、そのうちの約60%の人は「在宅介護」を選択されています。
しかし実際は、要支援に認定されている方の多くは「介護サービス」を利用していないと思われます。よって、実際に「介護サービス」が必要な要支援1以上の方で見てみると、60%以上の方が「在宅介護」を選んでいるのだと考えられます。
さらに、このグラフでは直近5年分を掲載していますが、この5年間だけ見てみても、右肩上がりに「在宅介護」者の人数が増えていることが分かりますね。
<在宅介護を受けている人数(要介護度別)>
それでは、要支援・要介護度別で「在宅介護」を受けている人数を見てみましょう。
出典:厚生労働省「介護保険事業状況報告(月報・暫定)」(令和4年4月分)
ちなみに、令和4年4月においてそれぞれの認定者数は下記通りです。
- 要支援1・・・960,104人
- 要支援2・・・951,377人
- 要介護1・・・1,394,635人
- 要介護2・・・1163,724人
- 要介護3・・・897,600人
- 要介護4・・・838,439人
- 要介護5・・・585,891人
<「在宅介護」を選択する割合>
このことから、それぞれの要介護度において、何割の人が「在宅介護」を選択しているのかを計算すると次の様になります。
- 要支援1・・・約34%
- 要支援2・・・約52%
- 要介護1・・・約77%
- 要介護2・・・約79%
- 要介護3・・・約63%
- 要介護4・・・約49%
- 要介護5・・・約42%
「要支援」に認定されてい方は、そもそも「介護サービス」を利用していない方も多いと思いますので、「要介護」に認定されている方で見ていきたいと思います。
「要介護1」「要介護2」では、多くの方が「在宅介護」を選択されていますが、「要介護3」以上になると、「在宅介護」を選択されている割合が減っていることが見て取れます。
また別のブログで解説する予定ですが、「施設介護」の中で比較的費用負担が少ないとされている「特別養護老人ホーム」は現在「要介護3」以上でないと入居することが出来ません。
このことからも「在宅介護」の限界は「要介護2」のあたりなのかもしれません。
<同居介護者の介護時間>
そこで、「在宅介護」を行う上で同居している介護者がどれぐらいの時間を「介護」に費やしているのかを、要介護度別にまとめた結果がこちらです。
この調査結果を見て分かる通り、「要介護2」以下では介護に費やす時間は「半日以下」が過半数を超えています。半日以下であれば、仕事をしながら介護も出来るのかもしれません。
しかし「要介護3」以上では急激に負担が増えています。
具体的に見てみましょう。
「要介護3」では介護に費やす時間が「半日程度」「ほとんど終日」を合わせると50%と半数を占めます。
「要介護4」では「半日程度」「ほとんど終日」を合わせると54%で、そのうち「ほとんど終日」が45.8%です。
そして「要介護5」では「半日程度」「ほとんど終日」を合わせると69%で、そのうち「ほとんど終日」が56.7%となり、2人に1人以上がつきっきりの介護をしていることになります。
要介護度が高くなれば高くなるほど介護に費やす時間が長くなる為、、介護をする人はストレスや疲れ、不安を感じる様になり、その期間が長くなれば長くなるほど、疲弊していきます。
さらに、要介護3以上で、認知症の症状があったり、夜間の排泄など、昼夜を問わずに介護が必要になってくると、「在宅介護」に限界を感じ、施設への入居を検討される方が多い様です。
<まとめ>
金銭的な問題から「在宅介護」を選択されているご家庭もありますが、「要介護者」の希望により「在宅介護」を選択されているご家庭もあります。しかし、今回見ていただいたデータから、「要介護3」以上になると「在宅介護」は様々な面から難しいものになってきます。「要介護者」の希望を叶えたいからといって、「要介護者」と「介護者」が共倒れになってしまっては意味がありません。「在宅介護」が厳しいなと感じたら、お互いの為にも「施設介護」に移行するのがいいのかもしれませんね。
そこで次回のブログでは、「在宅介護」がもたらす様々な問題点を見ていきたいと思います。是非次回のブログもご覧ください。