「介護施設の種類」解説します
ここまで数回に渡り「在宅介護」の現状について見てきました。そこで今回から数回に渡り「施設介護」の現状を見ていきたいと思います。
<施設介護とは?>
「施設介護」とは、その名の通り「施設」に入居して介護を受けることを言います。
そして「施設」は、「介護施設」と「介護保険施設」に分けられます。
「介護保険施設」は、介護保険の適用対象となり、地方公共団体や社会福祉法人、医療法人などが運営していて、民間の介護施設よりも比較的費用が低く抑えられます。
<介護施設の種類>
介護施設には様々な種類・名称があり、違いが分からないと思われる方も多いのではないでしょうか。そこで、それぞれの施設の特徴などを1つずつ見ていきたいと思います。
【公的介護保険の施設サービス対象の介護施設】
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
原則「要介護3」以上と認定され、常に介護が必要で在宅では介護が困難な人が入居できます。以前は要介護1や要介護2の人も入居できましたが、入居したい人が多くなったことから、現在はよほどの事情がない限り「要介護3」以上に認定されている人しか入居出来ません。
施設内では日常生活上の世話や、機能訓練を受ける事ができます。
月額10万円~15万円と比較的費用が抑えられる為、とても人気があります。その為、地域によっては入居待機者が多く、入居まで数カ月~数年かかることもあります。
介護老人保健施設
「要介護」状態と認定されていて、病状が安定している人が入居することが出来ます。
看護や医学的管理のもとで、介護機能訓練などを受けられ、在宅復帰を目指します。
病院から退院した後すぐに自宅で生活することが難しい人が、在宅復帰を目指す為に入居します。その為、入居期間は原則として3~6カ月という期限があります。
こちらは「終の棲家」とはならず、やむを得ない状況の時に入居する施設という位置づけです。
介護医療院
「要介護」状態と認定され、慢性疾患などにより長期療養を必要とする人が入居できます。
医療や介護、日常生活上の世話を受けることができます。
介護療養型医療施設
「要介護」状態と認定され、急性期の治療を終えて慢性疾患などにより、長期療養を必要とする人が入居できます。
医療や介護、日常生活上の世話の受けられます。
こちらは2024年(令和6年)3月末で廃止され、前述の介護医療院へ転換される予定となっています。
【公的介護保険の施設サービス対象外の介護施設】
有料老人ホーム
入居する為の要件は無いことが多く、施設によっては「要介護5」まで受け入れ、看取りまで対応するところもあります。その為「終の棲家」にもなりえます。
「有料老人ホーム」は「介護付き」「住宅型」「健康型」の3つに大別されます。
「介護付き」の場合、要介護認定されていれば、そこでの介護や日常生活上の世話は、特定施設入居者生活介護(在宅サービス)として、公的介護保険の給付を受けられます。
サービス付き高齢者向け住宅
「サ高住」と言われる施設です。
入居する為の要件はありませんが、介護度が重い人や、認知症が進行した人は受け入れられない場合があります。
バリアフリー構造や安否確認等、高齢者の受け入れ支援に特化した賃貸住宅です。要介護認定されていれば、公的介護保険の「在宅サービス」を利用しながら生活を続けることもできます。
初期費用は数十万円と安いところから、数千万円のところもあります。
月額費用も5万円~25万円ぐらいと、立地条件や提供サービスによって異なります。
グループホーム
「要支援2」以上で、認知症のため介護を必要とする人が入居できます。
家庭的な雰囲気の中で共同生活を送りながら、日常生活の介護や機能訓練を受けられます。施設がある市町村の住民であれば、公的介護保険の認知症対応型共同生活介護(地域密着型サービス)を受けられます。
グループホームは、家庭的な環境で自立支援と精神的安定を図り、症状の進行を遅らせることを目的としています。ただし、介護度が重くなったり、医療ケアが必要になった場合は、退去しなくてはいけない場合があります。
軽費老人ホーム(ケアハウス)
家族との同居が困難な、60歳以上の自立した生活が送れない人が入居できます。
食事サービスがあり、要介護認定されていれば公的介護保険の「在宅サービス」を利用できます。
「施設介護」と「在宅介護」は別物と考えがちですが、施設に入居しながら「在宅介護」サービスを受けることもできる為、全くの別物ではありません。
<まとめ>
ここまで解説してきた通り、「介護施設」には様々な種類があります。そして、その種類によってかかる費用もかなり異なります。
また「介護施設」によって、入居条件や退去条件も様々です。
「在宅介護」を行っていて「限界」を感じてから施設を探し始めると、なかなか条件に合った介護施設を見つけることができず、更に追い詰められてしまうこともあります。
今は「在宅介護」を問題なく行って行けている方も、万が一のことを考え、心に余裕があるうちから少しずつ「介護施設」について、探し始めておいた方が良いのではないでしょうか。
最近は、インタネットで【LIFULL介護】手軽に調べることもできます。
次回は様々なデータ等を基に、「施設介護」の現状を見ていきたいと思います。是非次回もご覧ください。
「在宅介護」で受けられるサービスとは?
ここまで数回に渡って「在宅介護」の現状を解説してきました。今回は「在宅介護」で受けられるサービスについて解説します。
<在宅介護で受けられる2種類のサービス>
「在宅介護」では、「居宅介護サービス」と「地域密着型サービス」の2種類を利用することが出来ます。「居宅介護サービス」と「地域密着サービス」は、さらに細かいサービスがあります。
まとめるとこの様な感じです。
それでは、もう少し細かく解説していきます。
<訪問型サービス>
「訪問型サービス」とは、要介護者の自宅にヘルパーや介護士、看護師などが訪問して行うサービスです。
【訪問介護】
利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、訪問介護員(ホームヘルパー)が利用者の自宅を訪問し、食事・排泄・入浴などの介護(身体介護)や、掃除・洗濯・買い物・調理などの生活の支援(生活援助)をします。通院などを目的とした乗車・移送・降車の介助サービスを提供する事業所もあります。
【訪問入浴介護】
利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、利用者の身体の清潔の保持、心身機能の維持回復を図り、利用者の生活機能の維持又は向上を目指して実施されます。看護職員と介護職員が利用者の自宅を訪問し、持参した浴槽によって入浴の介護を行います。
【訪問看護】
利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、利用者の心身機能の維持回復などを目的として、看護師などが疾患のある利用者の自宅を訪問し、主治医の指示に基づいて療養上の世話や診療の補助を行います。
【訪問リハビリテーション】
利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などが利用者の自宅を訪問し、心身機能の維持回復や日常生活の自立に向けたリハビリテーションを行います。
【夜間対応型訪問介護】
利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を、24時間安心して送ることができるよう、夜間帯に訪問介護員(ホームヘルパー)が利用者の自宅を訪問します。「定期巡回」と「随時対応」の2種類のサービスがあります。
【定期巡回・随時対応型訪問介護看護】
利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、定期的な巡回や随時通報への対応など、利用者の心身の状況に応じて、24時間365日必要なサービスを必要なタイミングで柔軟に提供します。また、サービスの提供にあたっては、訪問介護員だけでなく看護師なども連携しているため、介護と看護の一体的なサービス提供を受けることもできます。
<通所型サービス>
要介護者が施設に日帰りで通い、そこでサービスを受けます。
【通所介護(デイサービス)】
利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、自宅にこもりきりの利用者の孤立感の解消や心身機能の維持、家族の介護の負担軽減などを目的として実施します。利用者が通所介護の施設(利用定員19人以上のデイサービスセンターなど)に通い、施設では、食事や入浴などの日常生活上の支援や、生活機能向上のための機能訓練や口腔機能向上サービスなどを日帰りで提供します。生活機能向上グループ活動などの高齢者同士の交流もあり、施設は利用者の自宅から施設までの送迎も行います。
【地域密着型通所介護】
利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、自宅にこもりきりの利用者の孤立感の解消や心身機能の維持、家族の介護の負担軽減などを目的として実施します。利用者が地域密着型通所介護の施設(利用定員19人未満のデイサービスセンターなど)に通い、施設では、食事や入浴などの日常生活上の支援や、生活機能向上のための機能訓練や口腔機能向上サービスなどを日帰りで提供します。施設は利用者の自宅から施設までの送迎も行います。
【認知症対応型通所介護(認知症対応型デイサービス)】
認知症の利用者を対象にした専門的なケアを提供するサービスで、利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、認知症の利用者が通所介護の施設(デイサービスセンターやグループホームなど)に通い、施設では、食事や入浴などの日常生活上の支援や、生活機能向上のための機能訓練や口腔機能向上サービスなどを日帰りで提供することにより、自宅にこもりきりの利用者の社会的孤立感の解消や心身機能の維持回復だけでなく、家族の介護の負担軽減などを目的として実施します。施設は利用者の自宅から施設までの送迎も行います。
【通所リハビリテーション(デイケア)】
利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、利用者が通所リハビリテーションの施設(老人保健施設、病院、診療所など)に通い、食事や入浴などの日常生活上の支援や、生活機能向上のための機能訓練や口腔機能向上サービスなどを日帰りで提供します。
<短期入所型サービス(ショートステイ)>
一時的に施設に宿泊し、施設に入所している人と同じ様なサービスを受けます。介護している人の休息にもなります。
【短期入所生活介護(ショートステイ)】
利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、自宅にこもりきりの利用者の孤立感の解消や心身機能の維持回復だけでなく、家族の介護の負担軽減などを目的として実施します。介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)などが、常に介護が必要な方の短期間の入所を受け入れ、入浴や食事などの日常生活上の支援や、機能訓練などを提供します。
【短期入所療養介護(ショートステイ)】
利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、療養生活の質の向上及び家族の介護の負担軽減などを目的として実施します。医療機関や介護老人保健施設、介護医療院が、日常生活上の世話や、医療、看護、機能訓練などを提供します。
<小規模多機能型サービス>
ここまで解説した3種類のサービスの、良いところを組み合わせたサービスです。介護する側の負担を減らせると同時に、ニーズに応じたきめ細かいサービスを受けることが出来ます。
【小規模多機能型居宅介護】
利用者が可能な限り自立した日常生活を送ることができるよう、利用者の選択に応じて、施設への「通い」を中心として、短期間の「宿泊」や利用者の自宅への「訪問」を組合せ、家庭的な環境と地域住民との交流の下で日常生活上の支援や機能訓練を行います。
【看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)】
利用者が可能な限り自立した日常生活を送ることができるよう、利用者の選択に応じて、施設への「通い」を中心として、短期間の「宿泊」や利用者の自宅への「訪問(介護)」に加えて、看護師などによる「訪問(看護)」も組み合わせることで、家庭的な環境と地域住民との交流の下で、介護と看護の一体的なサービスの提供を受けることができます。
<福祉用具貸与等>
公的介護保険が適用となる為、本来よりも安い価格で利用できます。住環境が整備されることで、介護の負担を減らすことが出来ます。
【福祉用具貸与】
利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、指定を受けた事業者が、利用者の心身の状況、希望及びその生活環境等をふまえ、適切な福祉用具を選ぶための援助・取り付け・調整などを行い、福祉用具を貸与します。福祉用具を利用することで日常生活上の便宜を図り、家族の介護の負担軽減などを目的として実施します。
【特定福祉用具販売】
利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、福祉用具販売の指定を受けた事業者が、入浴や排泄に用いる、貸与になじまない福祉用具を販売します。福祉用具を利用することで日常生活上の便宜を図り、家族の介護の負担軽減などを目的として実施します。
<まとめ>
「在宅介護」でも、「公的介護保険」制度を活用して様々な「介護サービス」を利用できます。「在宅介護」だから全部自分でやらなければ、と思ってしまう方も多くいらっしゃいます。
しかし、介護にゴールはありません。適切な「介護サービス」を利用することで、要介護者と介護者が幸せに毎日を送ることが出来ます。
周りの人に相談しながら、要介護者・介護者にとって、よりよい状況を選択していくことが大切です。
ここまで数回に渡り「在宅介護」の現状について見てきました。そこで次回からは、「施設介護」の現状について見ていきたいと思います。
「在宅介護」の「メリット」「デメリット」は
前回のブログでは「在宅介護」で限界を迎える前にやりたいことについて解説しました。今回は「在宅介護」のメリットとデメリットについて考えてみたいと思います。
<在宅介護のメリット>
✓住み慣れた自宅で生活を続けられる
「在宅介護」の一番のメリットはこれです。以前のブログでご紹介したとおり、「終の棲家」は住み慣れた「自宅」がいいと、多くの人は考えています。
「在宅介護」を選択することで、要介護状態になっても住み慣れた自宅で生活を続けられます。
家族の理解が得られたり、一人暮らしの場合でも、日常生活に支障をきたさなければ、「在宅介護」を選ぶケースが多いようです。
✓家族が近くで見守れる
家族が介護を担うことで、要介護者の生活習慣や性格を良く分かっている為、他人では分からない様なちょっとした変化にも気が付き、対応することが出来ます。
要介護者も、家族に対しては思っていることを伝えやすく、安心感もある為、落ち着いて介護を受けることが出来ます。
✓「施設介護」よりも費用が抑えられることが多い
「在宅介護」の場合は、「訪問介護サービス」や「デイサービス」を利用することが多いです。こちらは「公的介護保険制度」を活用出来る為、比較的安く利用できます。
「施設介護」も同様に「公的介護保険制度」を利用できますが、やはり「在宅介護」よりは費用がかかります。
費用を出来るだけ抑えたい場合に「在宅介護」を選ばれる人も多い様です。
<在宅介護のデメリット>
✓適切な介護を行えない場合がある
家族が介護を担う場合、医療に対して専門的な知識を有していない場合がほとんどです。その為、適切な介護を受けられないと、様態が悪化して寝たきりになってしまうこともあります。
認知症を発症していて、徘徊する場合などは、要介護者本人が危ない目にあったり、周囲に迷惑をかけてしまうこともあります。
✓緊急時にすぐに対応できない
「在宅介護」は、医師や看護師が常駐している「施設」とは異なり、医療の専門家が近くにいないため、緊急時の対応が遅れることがあります。
✓家族等にかかる負担が大きくなる
育児とは異なり、介護にはゴールがありません。
介護の期間が長くなれば長くなるほど、介護者は精神的、肉体的に追い詰められてしまいます。また、子どもが1人しかいない場合は、特に負担が大きく、要介護者・介護者が共倒れてしまう事があります。
✓周囲から孤立することがある
「介護」はとてもセンシティブな要素をはらんでいます。その為、誰にも相談せずに家庭内だけで解決しようとして、周囲から孤立してしまうこともあります。
「介護」に費やす時間が長ければ長いほど、介護者は自分の時間が持てず、地域の催しに参加できず、社会とのつながりが無くなってしまうこともあります。
✓介護離職する可能性がある
要介護者の介護度が上がっていくにつれて、介護と仕事の両立が難しくなります。その結果、「介護離職」を選択しなくてはいけない状態に追い詰められてしまうかもしれません。
他のブログで解説したいと思いますが、「介護離職」は様々な問題をはらんでいて、出来るだけ避けなくてはいけません。
<まとめ>
「在宅介護」には、メリットもデメリットもあります。しかし「在宅介護」はもしかしたらデメリットの方が多いのかもしれません。
介護の負担はとても大きいので、最悪の場合、介護疲れによって痛ましい事件に発展してしまうこともあります。
「配偶者の面倒をみないなんて、冷たい妻だ」とか、「親を施設にいれるなんで、なんて冷たい子どもなんだ」と言う周囲の意見を気にして、無理に「在宅介護」を選択している方もいるでしょう。
実際に「介護」を担わない人には、言わせておけばいいのです。
要介護者と介護者が幸せに暮らす事が一番大切です。要介護者と介護者、当事者同士がしっかりと話し合い、お互いに納得した方法で介護をしていきましょう。
「在宅介護」で限界を超える前にやりたいこと
前回のブログでは「在宅介護」を行う上での3つの負担について解説しました。今回は「在宅介護」で限界を超えない為にはどうしたらいいのか、「在宅介護疲れ」を軽減するにはどうしたらいいのかを解説します。
<在宅介護疲れを軽減するには?>
「在宅介護」を行うことは、本当に大変だと思います。要介護者の要介護度が重い場合は、その人の「命」を預かっているといっても過言ではなく、ずっと神経を張り詰めていなくてはいけないこともあります。
更に、要介護者が認知症を発症している場合で、徘徊してしまう場合は、ずっと見ていなくてはいけないかもしれません。
前回のブログで解説したとおり、多くの介護者は在宅で介護することに対してストレスを感じています。そこでこの「ストレス」や「疲れ」を軽減する方法を考えてみたいと思います。
✓友人・知人などに相談する
「悩み」や「疲れ」を相談できる友人・知人がいる場合は、思いの丈を聞いてもらうだけでも心は軽くなります。話してみたら、同じ悩みを抱えている人もいるかもしれません。中には、適切なアドバイスをくれる人もいるかもしれません。
「こんな話をしてしまったら嫌がられるかな?」と思ってしまい、相談することをためらってしまうことがあるかもしれませんが、話してみたら案外親身に相談に乗ってくれるかもしれません。介護の当事者ではないが故に、客観的なアドバイスをもらえるかもしれません。
限界を超える前に、一度友人や知人に相談してみてください。
✓介護のプロ・専門家に相談する
介護のプロや専門家に相談することで、適切なアドバイスをもらえる可能性が高いでしょう。例え適切なアドバイスがもらえなかったとしても、「介護」の現状を良く分かっている人に話しを聞いてもらえれば、心の負担が軽くなります。
悩みは抱え込まないことが大切です。「どうせ現状は改善されないのだから、話してもしょうがない」と思いがちですが、話しをするだけでも心は軽くなります。一度介護のプロに思いの丈をぶつけてみましょう。
✓介護サービスを利用する
要介護者の「自宅」にいたいという想いを重視するあまり、ずっと自宅で介護をしなくてはいけないと思いがちですが、たまには「介護サービス」の利用を検討することも一つの手です。
「デイサービス」や「ショートステイ」を利用して、少し休む時間を取りましょう。デイサービスやショートステイの利用を嫌がる要介護者もいるかもしれません。しかし、無理を続けて「介護者」がもし倒れてしまったら、要介護者は結局施設に入居しなくてはいけなくなってしまいます。
その様な最悪な事態を避ける為にも、要介護者と話し合って「デイサービス」や「ショートステイ」を利用してみましょう。時には要介護者に我慢をしてもらうことも必要です。
✓介護保険サービス・ケアプランを見直す
同居の家族が「在宅介護」をしていても、「介護サービス」は利用できます。公的介護保険制度の上限いっぱいまで「介護サービス」を利用していない場合は、もう少し「介護サービス」の利用を検討してもいいかもしれません。
特定の介護者だけに「介護」の負担がいかない様に、負担に思っている部分については遠慮せずに「介護サービス」を利用しましょう。
「公的介護保険」制度の上限を超える場合でも、全額自己負担することで「介護サービス」を受けることができます。金銭的に余裕がある場合は、上限額を超えてでも「介護サービス」を受けられるケアプランにすることも一つの手です。
✓文明の利器を頼る
現在、「介護」に役立つ文明の利器がたくさんあります。
「見守りカメラ」を利用すれば、ずっと要介護者の側にいる必要はなくなります。「見守りカメラ」というと、インターネットに接続しなくてはいけなかったり、接続が難しそうで使用するのをためらう方もいらっしゃいますが、例えばこの「見守りカメラ」
↓↓↓
離れて暮らすご両親の様子がわかり安心!SIMカード内蔵【みまもりCUBE】
は、インターネット接続が不要で、コンセントにさすだけですぐにスマホからライブの映像を見る事ができます。さらに、場合によっては「公的介護保険」制度の対象となる場合があります。
「ドアを開ける」という動作を登録しておくことで、「ドアを開けた」際に通知を送ることも出来るので、認知症の方で徘徊してしまう場合、部屋を出て行ってしまった場合にすぐに気づくことが出来ます。
また、要介護者をベッドから車いすに移動させたり、抱きかかえて起こしたりする場合、介護者の体にかなりの負担がかかります。自分より体重が重たい人を介護する場合は、その負担は想像に難くありません。そんな時にはこちら
↓↓↓
身体の動作を補助してくれる、夢のような機器があります。こちらは、充電等の電気が不要なので、使いたい時にすぐ使うことができる優れものです。
この2つはほんの一例ですが、人の力だけでなんとかしようとせずに「文明の利器」を活用してみましょう。大介護時代を迎える日本において、このような文明の利器はこれからもたくさん開発されていくと思います。
<レスパイトケアとは>
介護者が休息をとることを「レスパイトケア」と言います。
「レスパイト」とは、小休止、息抜きなどを意味する言葉です。一時的に「介護」を代行し、介護者に休息の時間をとってもらうことを言います。
前述した様に、「ショートステイ」や「デイサービス」を活用して、要介護者に施設に行ってもらっている間、介護者は休むことが出来ます。
「レスパイトケア」は、「在宅介護」が崩壊しないための大きな柱となります。
<まとめ>
要介護者の「自宅」で過ごしたいという希望を叶えたいが為に、介護者は大きな負担やストレスを抱えてしまいます。介護はゴールが見えない長い闘いです。「在宅介護」を長く続けていく為には、「介護者」が我慢をしない事が大切です。
話しを聞いてもらったり、休息をとったり、文明の利器を利用したりして、「要介護者」と「介護者」がお互いに心穏やかに暮らして行けるようにしたいものですね。
次回は、「在宅介護」のメリットとデメリットについて解説したいと思います。是非次回もご覧ください。
「在宅介護」の負担と課題って?
前回のブログでは「在宅介護」の限界はどこにあるのかを解説しました。今回は「在宅介護」がもたらす問題点についてみていきたいと思います。
<介護者は誰?>
「在宅介護」を行うにあたり、介護する人「介護者」は誰なのでしょうか?こちらは要介護者等と続柄別主な介護者の構成割合のグラフです。
出典:厚生労働省「国民生活基礎調査の概況」(2019年)を編集
こちらのグラフをご覧いただくと分かる通り、「在宅介護」を担う介護者の半数は同居親族です。やはり「介護」をするに当たっては、「同居」していないと難しいということですね。
前々回のブログで「在宅介護」には3種類あると解説しました。その中で「近距離介護」や「遠距離介護」を選択している方の多くが、このグラフでいう別居の家族等にあたります。
<介護者のストレスは?>
容易に想像がつくと思いますが、「介護」を担うことでストレスを感じる人が多くいます。特に「同居」して介護を担っている場合、ストレスを感じる事が多いのではないでしょうか。
そこで、同居の主な介護者の悩みやストレスの状況がこちらです。
この調査結果から分かる様に、同居して介護を担っている多くの方が、「介護」に関するストレスを感じています。むしろ、ストレスが無いと回答されている方がいらっしゃる事に驚きを感じます。
<在宅介護の負担とは?>
それでは、「在宅介護」をするにあたって「負担」に感じることは何なのかをみていきます。「在宅介護」には3つの負担があります。
1.『肉体的負担』
1つ目は「肉体的な負担」です。
要介護者をベッドから車いすに移動させたり、着替えさせたり、入浴の手助けをするのは、とても体力がいります。
最近は「夫」の介護をする「妻」が増えていて、自分よりも体重の重たい「夫」を支えるのには体力がいります。「夫」と「妻」は同じ様な年齢であることも多く、自分の体力が衰えてきている中で、「夫」の体重を支えるというのはかなりの重労働になります。
こうした中で、腰痛を発症してしまったり、ケガをしてしまったりすることも多くあります。
また、睡眠不足や過労で倒れてしまうこともあります。これはたとえ「介護者」が若かったとしても言えることです。
2.『時間的負担』
2つ目が「時間の負担」です。
介護をする人は、自分の日常生活に加えて介護をする時間を作らなくてはいけません。仕事をしている場合は、仕事の時間と自分の日常生活の時間に加えて、介護をする時間も作らなくてはいけないのです。
その結果、仕事を続けることが難しくなり、仕事を辞めなくてはいけなくなる場合もあります。これはまた別のブログで解説する予定ですが、「介護離職」という大きな問題に発展してしまうことも多々あります。
そして自分の時間が全くとれなくなり、ストレスがさらに増してしまいます。
3.『精神的負担』
3つ目が「精神的な負担」です。
24時間365日、休みなく介護する必要があるという現実が負担になることも多い様です。子育ても同じことが言えますが、子どもはある程度まで成長したら、負担は少なくなります。24時間365日気にかけていなくてはいけないというのは、せいぜい小学校に入るまでぐらいでしょうか。子育ての場合はゴールが見えているので、精神的な負担は介護ほどではありません。
また、要介護者が認知症の場合は、コミュニケーションをとることが難しく、精神的に大きな負担となります。
こうした状況が長く続くことで、介護をする側の精神がすり減ってしまい、心を病んでしまうことがあります。ゴールが見えないというのは、精神的にはかなり負担となるのです。
<肉体的負担を軽減するには?>
肉体的、時間的、精神的負担の中で、「肉体的」な負担を少し軽減できる方法を考えてみました。それがこちらです。
前述の通り、「介護者」は「腰」にとても負担がかかります。「要介護者」はどんなに軽くても40キロはあるのではないでしょうか。灯油1缶が18キロです。灯油2缶でも36キロ、「要介護者」はそれ以上に重いのです。
そこで、一時CM等でも話題になったこちら、
これを着用すると、だいぶ負担が軽くなるそうです。
「介護者」が身体を壊してしまっては「在宅介護」を続けることはできません。こういった文明の機器を使用して、少しでも負担を減らすことが大切なのではないでしょうか。
<まとめ>
この様に、「在宅介護」をするにあたっては、介護をする人に大きな負担がかかります。
これまで親にはいろいろと負担をかけてきたのだから、親が「在宅」で介護をしてほしいというのであれば、その希望を叶えてあげよう、と思う方もいるでしょう。
親戚などの周りの目を気にして、「夫」の面倒は「妻」である私が見なくては、と思う方もいるでしょう。
しかし「介護」はいつまで続くか分からず、生半可な大変さではありません。少しでも辛いと思うのであれば、全部自分で抱え込まずに第三者の力を借りるべきではないでしょうか。人間は大きなストレスがかかると認知症を発症してしまうことがあるそうです。人生100年時代と言われる現在、健康で長生きしなくてはいけないのです。
健康な人が、「介護を担う」ことで「要介護状態」になってしまっては意味がありません。人の気持ちや周りの目を気にすることも大切ですが、まずは「自分」が人生100年時代を「健康」で暮らしていける様に気を配ることが大切だと思います。
とはいっても「在宅介護」を選ぶ方もいらっしゃいます。次回のブログでは、「在宅介護」の疲れを軽減する為にはどうしたらいいのかについて解説したいと思います。是非次回もご覧ください。
「在宅介護」の限界って?
前回のブログでは「在宅介護」の種類を解説しました。今回は「在宅介護」の現状を確認したいと思います。
<在宅介護を受けている人数(トータル)>
多くの人が「終の棲家」に「自宅」を希望することから、その希望を叶えようと「在宅」で介護をするご家庭が多くあります。それでは実際どれぐらいの人が「在宅介護」を受けているかを見てみましょう。
こちらは、居宅(介護予防)サービス受給者数の推移です。各年4月のデータですが、2022年は400万人を超える方が「在宅介護」を受けています。400万人って言われても、イメージがつきにくいかと思いますが、東京ドームの収容人数が55,000人だそうですので、東京ドーム73個分に収容できる方が「在宅」で介護を受けているイメージです。
要支援・要介護認定されている人は約680万人ですので、そのうちの約60%の人は「在宅介護」を選択されています。
しかし実際は、要支援に認定されている方の多くは「介護サービス」を利用していないと思われます。よって、実際に「介護サービス」が必要な要支援1以上の方で見てみると、60%以上の方が「在宅介護」を選んでいるのだと考えられます。
さらに、このグラフでは直近5年分を掲載していますが、この5年間だけ見てみても、右肩上がりに「在宅介護」者の人数が増えていることが分かりますね。
<在宅介護を受けている人数(要介護度別)>
それでは、要支援・要介護度別で「在宅介護」を受けている人数を見てみましょう。
出典:厚生労働省「介護保険事業状況報告(月報・暫定)」(令和4年4月分)
ちなみに、令和4年4月においてそれぞれの認定者数は下記通りです。
- 要支援1・・・960,104人
- 要支援2・・・951,377人
- 要介護1・・・1,394,635人
- 要介護2・・・1163,724人
- 要介護3・・・897,600人
- 要介護4・・・838,439人
- 要介護5・・・585,891人
<「在宅介護」を選択する割合>
このことから、それぞれの要介護度において、何割の人が「在宅介護」を選択しているのかを計算すると次の様になります。
- 要支援1・・・約34%
- 要支援2・・・約52%
- 要介護1・・・約77%
- 要介護2・・・約79%
- 要介護3・・・約63%
- 要介護4・・・約49%
- 要介護5・・・約42%
「要支援」に認定されてい方は、そもそも「介護サービス」を利用していない方も多いと思いますので、「要介護」に認定されている方で見ていきたいと思います。
「要介護1」「要介護2」では、多くの方が「在宅介護」を選択されていますが、「要介護3」以上になると、「在宅介護」を選択されている割合が減っていることが見て取れます。
また別のブログで解説する予定ですが、「施設介護」の中で比較的費用負担が少ないとされている「特別養護老人ホーム」は現在「要介護3」以上でないと入居することが出来ません。
このことからも「在宅介護」の限界は「要介護2」のあたりなのかもしれません。
<同居介護者の介護時間>
そこで、「在宅介護」を行う上で同居している介護者がどれぐらいの時間を「介護」に費やしているのかを、要介護度別にまとめた結果がこちらです。
この調査結果を見て分かる通り、「要介護2」以下では介護に費やす時間は「半日以下」が過半数を超えています。半日以下であれば、仕事をしながら介護も出来るのかもしれません。
しかし「要介護3」以上では急激に負担が増えています。
具体的に見てみましょう。
「要介護3」では介護に費やす時間が「半日程度」「ほとんど終日」を合わせると50%と半数を占めます。
「要介護4」では「半日程度」「ほとんど終日」を合わせると54%で、そのうち「ほとんど終日」が45.8%です。
そして「要介護5」では「半日程度」「ほとんど終日」を合わせると69%で、そのうち「ほとんど終日」が56.7%となり、2人に1人以上がつきっきりの介護をしていることになります。
要介護度が高くなれば高くなるほど介護に費やす時間が長くなる為、、介護をする人はストレスや疲れ、不安を感じる様になり、その期間が長くなれば長くなるほど、疲弊していきます。
さらに、要介護3以上で、認知症の症状があったり、夜間の排泄など、昼夜を問わずに介護が必要になってくると、「在宅介護」に限界を感じ、施設への入居を検討される方が多い様です。
<まとめ>
金銭的な問題から「在宅介護」を選択されているご家庭もありますが、「要介護者」の希望により「在宅介護」を選択されているご家庭もあります。しかし、今回見ていただいたデータから、「要介護3」以上になると「在宅介護」は様々な面から難しいものになってきます。「要介護者」の希望を叶えたいからといって、「要介護者」と「介護者」が共倒れになってしまっては意味がありません。「在宅介護」が厳しいなと感じたら、お互いの為にも「施設介護」に移行するのがいいのかもしれませんね。
そこで次回のブログでは、「在宅介護」がもたらす様々な問題点を見ていきたいと思います。是非次回のブログもご覧ください。
「在宅介護」には3種類あります
「介護」は介護する場所によって、「在宅介護」と「施設介護」の2種類に分けられます。そこで今回から数回にわたって、「在宅介護」の現実について考えてみたいと思います。
<在宅介護とは>
「在宅介護」とはその名の通り、在宅で介護を受けることをいいます。
「介護」が必要な状態になると、要介護度によって差はありますが、日常生活に常に何かしらの支援が必要な状態になります。「施設」に入所する方もいらっしゃいますが、住み慣れた家で家族等に介護されたいと願う方も多くいらっしゃるのが現実です。
それでは、「在宅介護」の現状を様々なデータとともに見ていきます。
<終の棲家の希望>
皆さんは、「終の棲家」はどこにしたいと思っていますか?そんな事、考えたこともないと言う方が多いと思います。そこで内閣府がとった「身体が虚弱化した時に住みたい住宅」という調査結果を見てみたいと思います。
出典:内閣府「高齢者の住宅と生活環境に関する調査結果(全体版)」(平成30年度)
内閣府がこの様な調査を行っていることに驚きを感じますが、「身体が虚弱化した時に住みたい住宅」のベスト3は下記の通りです。
- 現在の住宅に、特に改修などはせずにそのまま住み続けたい
- 現在の住宅を改修し住みやすくする
- 介護を受けられる特別養護老人ホームなどの施設に入居する
この結果から分かる様に、多くの方が「住み慣れた自宅」を終の棲家としたい様なのです。やはり、人生の最期は「施設」や「病院」ではなく「自宅」で迎えたいですよね。私も今のところそう思っています。そこで似たような調査結果をもう一つ見てみましょう。
<最期を迎えたい場所>
こちらも内閣府の調査で「完治が見込めない病気の場合に迎えたい最期の場所」の結果です。
出典:内閣府「高齢者の住宅と生活環境に関する調査結果(全体版)」(平成30年度)
完治が見込めないと分かっていても、最期の場所として「自宅」を選ぶ方が多い様です。こちらの調査は、恐らくまだ要介護状態でない方や、末期の病に侵されていない方を対象にしているのではないかと思いますが、やはり住み慣れた「自宅」で最期を迎えたいという思いは分かる気がします。
それでは「在宅介護」の現実を見ていきましょう。
<「在宅介護」の3つの種類>
「在宅」での介護には、介護者と要介護者の物理的な距離によって3種類に分けられます。例えば、子どもが親の介護をする場合の例で見てみましょう。
【近距離介護】
要介護者と同居はせず、近くに住んで通いながら介護をすること
これは、子どもが親の暮らす地域に住んだり、親が子どもの住む地域に引っ越したりして近距離に住みながら介護をします。
親が重度の要介護状態でない場合に、このパターンを選ぶ方が多い様です。
同居して介護するよりも、お互いの生活スタイルを維持できるので、比較的ストレスが少ない方法です。
一方で、親が子どもの住む地域に引っ越しをすると、これまでの近所付き合い等が無くなってしまうので、自宅に引きこもりがちになってしまうというデメリットがあります。
【遠距離介護】
要介護者と同居せず、遠くに住んで通いながら介護をすること
子どもが遠く離れた場所に住んでいる親の元に、介護の為に新幹線や飛行機で移動して通います。
お互いの生活環境を変えなくていいという点がメリットですが、かなりの交通費が負担となります。さらに、体調が急変した際など、緊急時にすぐに駆け付ける事ができません。
【同居介護】
要介護者と同居して介護をすること
もともと同居している場合はもちろん、親が住む家に子どもが引っ越してきたり、子どもが住む家に親が引っ越してくる場合もあります。
常に見守っていられるので、体調が急変した時など、緊急時にすぐに対応が出来ることがメリットです。また、同居することで家賃を抑えることもできます。
一方で、親と密に接することになる為、人間関係がストレスになったり、介護と日常生活のメリハリが無くなるので、ストレスが溜まるというデメリットもあります。
この様に一概に「在宅介護」と言っても、3種類の方法があります。そしてそれぞれにメリットとデメリットがあります。それぞれのご家庭の事情がある為、どの「在宅介護」を選ぶかは、それぞれのご家庭次第です。
<介護帰省割引とは>
「遠距離介護」をする場合、負担となるのは交通費です。そこで、飛行機を利用する際には「介護帰省割引」というのを活用することができます。残念ながら新幹線にはありません。
例えばJALの場合はどういう制度なのかを見てみましょう。
【利用条件】
満12歳以上で要介護または要支援認定された方の「2親等以内の親族の方」と「配偶者の兄弟姉妹の配偶者」ならびに「子の配偶者の父母」に限り利用できます。
利用できる介護者の範囲は広いですね。
【予約・販売期間】
搭乗日の330日前の午前9時30分から搭乗当日まで
前もって計画した日に活用することもできますし、突然行かなくてはいけなくなった場合にも活用出来る様です。ただし、突然行かなくてはいけなくなった場合は、そもそもその飛行機に空席が無いとダメですね。
【申し込みに必要なもの】
次の3点に加え、「介護帰省割引情報登録申込書」と「JALマイレージバンクお得意様番号」が必要です。
- 介護保険証、介護認定結果通知書
- 戸籍抄本、戸籍謄本
- 公的書類(現住所記載)
手続きに多少の煩雑さはありそうですね。
【有効期限】
介護帰省割引の有効期限は、登録日から1年後の同日までとなっています。有効期限の更新手続きは、有効期間満了日の3カ月前~1年後まで出来ます。
この制度を利用する場合には、忘れずに更新手続きをとる必要があります。
【割引運賃】
どれぐらい運賃が安くなるかというと、羽田から福岡までの例で見てみます。
10月16日の7:10羽田発9:00福岡着の運賃の場合、
大人普通運賃・・・45,730円
特便割引3・・・27,980円
株主割引・・・23,130円
介護帰省割引・・・25,930円
となっていました。
特便割引3というのは、搭乗日の3日前までの予約で利用できる運賃です。これを見ると、「介護帰省割引」はお得ではありますが、「株主割引」の方がお得の様です。ただし、「株主割引」は、保有する株数によって利用できる回数の上限があります。
その為、介護をする為に飛行機を利用する際は、「介護帰省割引」の申請をしておいた方がよさそうですね。
<交通費を安く済ませるには>
「遠距離介護」を行う場合は、できるだけ交通費を抑えたいと思います。前述した通り、航空各社には「介護割」の様なものも用意されていますが、実際はもっと安く航空券を購入できる場合もあります。
しかし航空会社のサイトを1社ずつ自分で調べるのは大変ですよね。そんな時、この様なサイトを活用してみてください。
↓↓↓
1社ずつ自分で調べる必要がなく、出発地と到着地を入力するだけで、一番安い航空券を見つけることが出来ます。
「介護」にはとても時間がかかります。実際に「介護」に費やす時間以外の手間を、どれだけ省けるかが大切です。最近は便利なサービスがたくさんあります。この様なサービスを上手く利用して、できるだけ「介護」の負担を減らすことが、「在宅介護」を長く続けていく鍵になります。
<まとめ>
多くの方が最期の場所として「自宅」を希望します。その為、介護する人はその希望を叶えようと「在宅介護」を選択されているのが現状です。一概に「在宅介護」と言っても、同居しての介護から、遠距離介護まで様々です。しかし「在宅介護」には様々な問題点があります。次回のブログでは、引き続き「在宅介護」の現状について考えていきたいと思います。
「介護難民」続出するかもしれません
前々回、前回のブログでは、「高齢者人口の増加」や、それに伴い「社会保障費」が増えていることを解説しました。今回は少し話題を変えて、金銭以外のところで起こる問題について見ていきたいと思います。
<介護難民とは>
「介護難民」という言葉を聞いたことはありますか?
「介護難民」とは、介護が必要な「要介護者」に認定されているにも関わらず、「介護施設」に入所できなかったり、適切な「介護サービス」を受けられない65歳以上の高齢者のことを言います。
有識者会議の「日本創成会議」では、2015年に「2025年には全国で約43万人が「介護難民」になる」との予測を発表しています。
<介護難民が生まれる背景は>
なぜ「介護難民」が生まれるのでしょうか。それには大きく分けて次の2つの理由があると言われています。
- 高齢化の進展による「要介護者数」の増加
- 「介護従事者」の不足
【介護難民が生まれる原因①】
1つ目の「高齢化の進展による要介護者数の増加」については、前々回のブログで解説しました。
日本の総人口は減少しているにも関わらず、65歳以上の高齢者人口は年々増加しているのです。その結果、総人口の中で高齢者が占める割合は増加を続け、2025年には人口の約3割、2060年にはなんと、約4割を65歳以上が占めると言われています。
65歳以上の人が人口の約4割を占める社会って、想像できますか?
現在ですと、65歳ぐらいまで働いて、それ以降はこれまでの貯蓄と年金で暮らして行こうと思われている方が結構いるのではないかと思いますが、2060年には、若い人たちにしわ寄せが来るだけでなく、65歳以上の方も、健康であろうがなかろうが、働き続けなくてはいけない社会になっているのではないかと思います。
2060年、遠い未来の様な気がしますが、私もまだかろうじて生きているのではないかと思うので、2060年が来るのが怖くも感じます。
【介護難民が生まれる原因②】
そして「介護難民」が生まれる理由のもう1つが、「介護従事者の不足」です。
「介護事業者」に人手が足りているのかアンケートを取った結果がこちらです。
出典:公益財団法人介護労働安定センター「介護労働実態調査」(令和2年度)
左側のグラフが【全体】、右側のグラフが【訪問介護員】についてです。
【全体】の方のグラフを見てみると60.8%の介護事業所が人手が足りていないと回答しています。さらに【訪問介護員】にいたっては、80.1%の介護事業所が人手が足りていないと回答しているのです。
厚生労働省の資料によると、2025年度に必要な介護職員は約243万人です。それに対して、2019年度の介護職員数は約211万人なので、このまま介護職員が増えないとすると、2025年度には約32万人の介護職員が不足する計算になります。
さらに2040年度には、280万人の介護職員が必要と予測され、約69万人を追加で確保しなくてはいけないのです。
つまり、現在ただでさえ深刻な人手不足であるにも関わらず、今後ますます人手不足が深刻化することが予想されています。国は介護職員を増やす為に、これまでも様々な介護人材確保の対策に着手してきた様ですが、今後さらに総合的に強化する必要があると発表しています。
発表するだけではなくて、本気でしっかりと対策を打たないと「介護難民」が増加して、将来の日本はひどい社会になってしまいそうですね。
<「介護難民」対策は>
「介護難民」対策として国が打ち出したのが、「地域包括ケアシステム」です。
これは、地域密着型で高齢者をケアするという考え方で、地方自治体の「地域包括支援センター」が中心となって事業を運営しています。必要な「介護施設」や「医者」を紹介してくれたり、介護の相談にも乗ってもらえ、誰もが介護対策で利用できます。
この「地域包括ケアシステム」がどれぐらい「介護難民」対策に役立っているかは、またじっくりと調べてから、別のブログで解説したいと思っています。
<まとめ>
2060年には65歳以上の高齢者人口が、総人口の4割を占めると言われています。もちろんその中には、お元気な方もたくさんいらっしゃるので、全員が「要介護」状態になる訳ではありません。しかし、結構怖い未来が待っていると思いませんか?
もしその時、自分が「要介護」状態に認定されていて、「介護サービス」を受けたいと思っても「介護サービス」を提供してくれる人が見つからない。誰も自分の面倒を見てくれないとなったら、どうやって生活を維持させていけばいいのでしょうか。
子どもがいたとして、子どもが自分の面倒を見る為に仕事を辞める、そんなことになったらその子のその後の人生はどうなってしまうのでしょうか。
「介護離職」については、また別のブログで掘り下げたいと思っていますが、この「介護難民」問題、考えれば考えるほど怖い問題です。
ここまで数回にわたり、「高齢者人口」の増加に伴う様々な問題について解説してきました。次回からはもう少し具体的な【介護】の現実について解説していきたいと思っています。次回も是非、ご覧ください。
「公的介護保険」制度の財源って、誰がどうやって賄っているんでしょうか?
前回のブログでは、日本では高齢者人口の割合がどんどん高くなっていることを解説しました。そこで今回は、高齢者人口の割合が高くなることで起こる問題、「要介護認定者数」の増加と、介護保険の「財源」について解説します。
<要介護認定者数の推移>
高齢者人口が増える事で、当然ですが「要介護(要支援)」に認定される人も増えています。こちらは「要介護認定者数」の推移のグラフです。
出典:厚生労働省老健局「介護保険制度をめぐる最近の動向について」(令和4年3月24日)
「公的介護保険」制度は2000年にスタートしました。こちらのグラフには載っていませんが、2000年の要介護認定者は218万人でした。しかし2020年にはなんと669万人になっています。約3倍です!
高齢者人口が増えているので当然と言えば当然です。
ちなみに、「要支援・要介護度」の内訳はこの様になっています。
出典:厚生労働省「介護保険事業状況報告(暫定)」(令和3年1月分)
「要介護1」「要介護2」に認定されている人は100万人を超えていますね。中程度の「要介護状態」の人が多いことが分かります。
<「介護サービス」をめいっぱい利用すると?>
ここで、要介護(要支援)認定者の人が、「介護サービス」を支給限度額上限いっぱい利用したとして、「介護サービス」にかかる費用が年間どれぐらいなのかを計算してみました。
◆要支援1
50,320円×960,104人×12カ月=5,797億4,919万9,360円
◆要支援2
105,310円×951,377人×12カ月=1兆2,022億7,414万2,440円
◆要介護1
167,650円×1,394,635人×12カ月=2兆8,057億2,669万3,000円
◆要介護2
197,050円×1,163,724人×12カ月=2兆7,517億4,177万400円
◆要介護3
270,480円×897,600人×12カ月=2兆9,133億9,417万6,000円
◆要介護4
309,380円×838,439人×12カ月=3兆1,127億5,509万3,840円
◆要介護5
362,170円×585,891人×12カ月=2兆5,463億572万1,640円
これを合計すると、15兆9,119億4,679万6,680円となります。そして「介護サービス」を利用した人全員が1割負担と仮定すると、社会保障で9割を負担することになります。すると、14兆3,207億5,211万7,012円が必要なのです。
14兆と言われても、もはやどういう金額なのか見当がつきませんよね。そこでこちらが、令和4年度の国の一般会計歳入額のグラフです。
(国税庁のグラフをお借りしました)
これを見ると、「法人税」が13兆3,360億円となっていて、介護にかかる費用だけで「法人税」を全て使ってしまうことが分かります。
今回は、「要支援・要介護」認定者が全員上限いっぱいの「介護サービス」を利用し、さらに全員が1割負担と仮定して計算している為、実際はこんなにはかかっていません。しかしこの先もっと高齢者人口が増えていくことが考えられるので、「介護サービス」にかかる費用は増えていくと考えられます。
そこで、実際はどれぐらいかかっているのかを見てみます。
<介護保険にかかる金額は?>
「公的介護保険」にかかる給付費・事業費の推移はこの様になっています。
出典:厚生労働省老健局「介護保険制度をめぐる最近の動向について」(令和4年3月24日)
「公的介護保険」制度が始まった2000年と比べると、令和元年には10.6兆円と3倍以上になっています。さらに、2040年には24兆円になると予想されているのです。2000年と比べると約8倍です!すごい増加率ですよね。
それでは実際この財源はどこから賄われているかを見てみましょう。
<公的介護保険の財源は?>
公的介護保険の財源構成と規模はこの様になっています。
出典:厚生労働省老健局「介護保険制度をめぐる最近の動向について」(令和4年3月24日)
この様に、財源は「社会保険料収入」と「公費」で賄われていますが、社会保障費は右肩上がりです。つまり、被保険者から徴収した社会保険料収入では賄うことが出来ず、実態としては半分近くを公費で賄っているのです。
また、保険料の部分も被保険者の負担が大きくなっています。
<公的介護保険の保険料>
65歳以上の「第1号被保険者」が支払う「介護保険料(全国平均)」の推移がこちらです。
出典:厚生労働省老健局「介護保険制度をめぐる最近の動向について」(令和4年3月24日)
「公的介護保険」制度は、3年毎に改定されます。そしてこの改定の度に「介護保険料」は増加しています。「公的介護保険制度」がスタートした2000年と比べると、現在の保険料は倍以上になっています。高齢者人口がこの先も増えていくことを考えると、これからもますます「介護保険料」は増えていくのではないでしょうか。
ちなみに、こちらは65歳以上の「第1号被保険者」が支払う「介護保険料」のグラフですが、40歳~64歳の「第2号被保険者」が支払う「介護保険料」も、同じように増加しています。現役世代の負担も、これからますます重たくなると考えられます。
<まとめ>
以上のことから分かる様に、右肩上がりで増加し続ける社会保障給付費は、税金と借金に頼らざるを得ません。今回解説しているのは【介護】にかかる費用についてのみです。その他も【医療費】高齢者人口が増えることで増えていくでしょう。
やはり国民の負担は、ますます重くなっていくことを覚悟しなくてはいけませんし、「公的介護保険」制度のこのままの状態での存続は、なかなか厳しいものになるのではないでしょうか。
高齢者人口の割合から「公的介護保険」制度について考えました
これまで数回に渡り「公的介護保険」制度の中身について解説してきました。「公的介護保険」制度によって、もし要介護状態になっても安心だなぁと思われた方も多いのではないでしょうか。
しかし、実際はどうなのでしょう。現在の「公的介護保険」制度だけで要介護状態への備えは充分なのでしょうか。そもそも現在の「公的介護保険」制度はこのまま維持されていくのでしょうか。
そこで今回から、こういったことについて様々なデータを基に考えていきたいと思います。
9月19日は敬老の日でした。そこで総務省統計局が『統計からみた我が国の高齢者ー「敬老の日」にちなんでー』というデータを発表しています。そこからいくつかデータを見てみたいと思います。
<高齢者の人口>
日本の総人口は、前年に比べ82万人減少しています。一方で、65歳以上の高齢者人口は3,627万人と、前年に比べ6万人増加したんだそうです。そして、総人口に占める高齢者の割合はなんと29.1%となったそうです。
日本は「超高齢社会」と言われますが、この言葉には次の様な定義があります。
- 高齢化社会・・・65歳以上の高齢者の割合が人口の7%を超えた社会
- 高齢社会・・・65歳以上の高齢者の割合が人口の14%を超えた社会
- 超高齢社会・・・65歳以上の高齢者の割合が人口の21%を超えた社会
日本では、1970年に「高齢化社会」に突入しました。そして1995年に「高齢社会」になります。そして2010年に「超高齢社会」になり、現在に至ります。
「高齢化社会」「高齢社会」「超高齢社会」は7の倍数になっています。21%の次は28%なので、本来であれば「超高齢社会」に次ぐ新しい言葉が生まれていてもおかしくなく、今の日本は新しいステージに突入しているということですね。
そして最新のデータでは、2040年には35.3%になると見込まれています。「超高齢社会」の次の次のステージに入るということです。
1950年からの高齢者人口及び割合の推移をグラフにしたものがこちらです。
(総務省統計局のグラフをお借りしました)
人口のデータは、将来推計といえども確実性が高いと言われています。なぜなら、既に生まれている人のデータがほとんどだからです。加えて、ただでさえ低かった出生率が、コロナ禍において更に低くなりました。そのことから考えると、2040年の高齢化率35.3%というのは、もしかしたら、もっと高くなるのかもしれません。
2040年、まだまだ先と思われるかもしれませんが、あと18年後です。その頃の日本は、どういう社会になっているのか、心配でなりません。
<高齢者人口の割合を世界と比較すると?>
この様に、日本の高齢者人口の割合はかなり高いですが、世界と比較してみるとどうなのでしょうか。なんと、日本がトップです!
高齢者人口の割合上位10か国はこの様な感じになっています。
(総務省統計局の表をお借りしました)
2位のイタリアと比べても、割合は断トツで高いですね!ただし、21%を超えると「超高齢社会」なので、どの国も問題を抱えているのではないでしょうか。ただし、日本の高齢化率はトップなので、社会保障政策において他国を真似するということが難しく、日本独自で考えなくてはいけません。それなのに、決定的な対策が打てていない様に感じられます。
<75歳以上の人口は?>
ここまで高齢者人口として65歳以上の人口を見てきました。しかし最近は、65歳と聞くとまだまだ元気なイメージがないですか?「要介護状態」になるような年齢には感じられませんよね。そこで「後期高齢者」と呼ばれる、75歳以上の人口について見てみたいと思います。
こちらは2000年から2060年(推計)までの75歳以上人口の推移です。
出典:厚生労働省老健局「介護保険制度をめぐる最近の動向について」(令和4年3月24日)
2000年と比べると、現在は約2倍、そして2060年には約2.5倍になると予想されています。なぜ2000年と比べたかというと、2000年は「公的介護保険」制度がスタートした年だからです。すなわち「公的介護保険」制度は、2000年の人口を基準に考えられている制度だということです。
<「公的介護保険」制度に及ぼす影響は?>
「公的介護保険」制度は3年に1度、制度改定が行われています。その結果、制度が始まった2000年と比べて、「介護保険料」はかなり高くなっています。また、「介護サービス」を受けた際に支払う自己負担額も、制度開始時は1割負担の方しかいませんでしたが、現在は2割、3割の負担をしている方がいらっしゃいます。
今回見ていただいた人口データによると、この先「介護保険料」はさらに上がり続けることは間違いなさそうです。
「自己負担額」も4割、5割負担という負担割合が創設されてもおかしくないのではないでしょうか。
そもそもこの「介護保険制度」、この先50年後も100年後も存続していける制度なのでしょうか。人口統計というのは、前述の通りかなり正確に将来の数値を出すことが出来ます。この先どういうことが起こるのかは、既に分かっているはずです。何か臭い物に蓋をしている感が否めません。
今回は高齢者人口のデータから「公的介護保険」制度について考えました。次回は、もう少し踏み込んで、「要介護認定者数」と「財源」について解説したいと思います。次回も是非、ご覧ください。